貴方と月と、少しの勇気と。



それから、毎日私達は屋上で一緒にご飯を食べた。

それまで学校生活をただ淡々と過ごしていた私に、それはおおきな変化だった。

吉田さんとは、自分と思えないほど自然に話せるようになった。


そして私が何をお礼しようか悩んでいるうちに、九月の下旬にさしかかったある日の事。

芸術棟の階段を上がって屋上に着くと、いつも通り吉田さんとお昼を食べ始める。

ふと、彼の食べているパンに目が止まった。


「なんだ?食うか?」


それに気付いた吉田さんが、パンを差し出してくる。

私はブンブンと首を振った。


「栄養、偏りませんか?」


余計なお世話かな、と思いながら訊く。

思い返せば、彼が菓子パン以外食べているのを見たことがない。

吉田さんは気にする様子はなくうーんと唸った。


「うちほぼ1日中俺しかいなくてさ。俺料理作れねぇし」

「じゃあ、朝は何も?」


うん、と頷く吉田さん。


「夜はどうするんですか?」

「大体コンビニ弁当かなー」


それを聞いて段々心配になってくる。

吉田さんまだまだ栄養が必要じゃないのかな。

おせっかいなんだろうけど、気になってしまう。


「本当は栄養のあるもの食った方がいいんだけどな。部活引退したら太っちまう」


呟くように言う吉田さん。

引退って普通夏だと思ってたけど、まだなんだ。私は部活に入ったことが無いからよく分からない。

同時に、私はこれかもしれない、とある考えが頭をよぎっていた。