貴方と月と、少しの勇気と。



「今気づいたけど……お前弁当少なすぎじゃねぇ?」


私もついでお弁当箱を見る。さっきから考え事に夢中で全然たべていない。

……少ないかな。

首を傾げていると、吉田さんはパンを一つ取り出して私の手にポンと置いた。


「え……?」

「食え。普通のクリームパンだから昨日のほど甘くねぇよ」


昨日のって、あんこ……なんとかパンの事かな。確かにびっくりするくらい甘かった。

見ると、購買で美味しいと評判のクリームパンが手中にあった。校内人気ナンバーワンのパンで、すぐに売り切れるとか。


「こんなの貰えません」


慌てて返そうとする。

でも、それは吉田さんによってぐいっと押し返された。
私の手の甲を包み込む大きな手。突然の事で少しドキッとする。触れている所が温かい。