「……あの」
ボソ、と口ごもるように言うと、吉田さんは分かっていたように白い歯を見せて笑った。
「大丈夫、言わねぇから」
それを聞いてホッと安堵の息を吐く。
吉田さんは紙パックのいちごミルクに付いているストローを外した。
「んで、いつからふかやんの事好きなの?」
ビニールからストローが取り出しにくいのか、カリカリとビニールを引っかきながら聞かれる。
えーと……どうしよう。
「小さい頃からです」
「小さい頃?」
「家がすぐ近くだから、昔から知り合いなんです」
やっとストローが取り出せて、吉田さんはパッと嬉しそうに笑った。
そしてその顔をそのまま私に向ける。
「へー、幼なじみか。じゃあくっついたらすげーじゃん」
屈託のない笑顔に、私は無理やり頷いた。
そのまま俯く私に、まだ恋の事で落ち込んでいると思ったのか、吉田さんは肩をポンポンと叩く。
「大丈夫、お前可愛いし付き合えるよ」
……可愛いって。
お世辞だと分かってても、吉田さんから言われると嬉しい。
いや、それよりも付き合うだなんて。吉田さんは私が深谷君とそういう関係になりたがってると思ってるのかな。
深谷君じゃなくても、私に恋人なんてできるわけないのに。
「あの……」
別に付き合いたいわけじゃない、と言おうとした時、
「はあ!?」
と吉田さんが声を上げた。
びっくりして目をぱちくりさせていると、吉田さんが私のお弁当を覗き込んだ。
