貴方と月と、少しの勇気と。



「で、お前の好きな人って誰?」


幸せな時間も束の間。

やっぱりその話になるよね。その為にお昼誘ってくれたんだから。

ここで、好きな人がいるのは嘘です、と正直に謝れば良かったのかもしれない。


「……深谷翔君です」


あろう事か私の口はとんでもない事を言ってしまった。

何言ってんの、私。

いつからこんなに嘘つきになったんだろう。

でも、せっかく対等に話してくれてるのに、この人に嫌われたくないって思った。

咄嗟に頭に浮かんだ男子が深谷君だったけれど、どうか二人が知り合いじゃありませんように。

そう祈ったけれど、嘘をついたバチが当たってしまった。


「ふかやん?まじで?」


……知り合いだった。

しかも、結構仲が良さそうな呼び方。


「知り合い……ですか」

「サッカー部だし」


吉田さん、サッカー部なんだ。……いや、そこじゃない。

もし私が深谷君の事を好きだって事が誰かに伝わったら、深谷君に迷惑がかかってしまう。

それだけは絶対に避けたかった。幼なじみを困らせたくて言ったわけじゃない。