貴方と月と、少しの勇気と。



「翔ぅ~!」


その時、そんな甘い声と共に、深谷君の腕に女の子が抱きついた。

昨日とは違う子だ。やっぱり深谷君はモテるんだ、凄いな。

そしてその人の視線は私に向く。


「なぁに、この子」


深谷君は私に見向きもせず、そのまま女の子と手を繋いだ。


「あー……、ただのゴミ」


私は目を伏せた。

冷たい声と、冷たい言葉。

――辛くない、わけがない。


私はただ、去っていく二人の背中を見つめることしか出来なかった。