「おい、どけよ」
振り向くと、そこには深谷君がいた。
そういえば、深谷君の下駄箱は私の上だ。
私は謝ってからそこから退いた。
――と思ったら、視界が急変する。
腕を掴まれた次の瞬間、深谷君に体を下駄箱に乱暴に押し付けられていた。
鉄製の下駄箱に頭を思いっきりぶつけて痛い。
目の前には視界いっぱいに深谷君の顔が広がっていた。
昨日の吉田さんと同じような距離感。
吉田さんは凄くドキドキしたのに、深谷君は妙に冷めた気持ちになる。
深谷君は私のメガネに手をかけた。
「お前メガネくらい外せよ。顔は別に悪くねぇ癖に」
自分がカッコイイって分かってるから、こんな事できるんだろうな。
……昔は、優しかったのに。