「そんでお前、なんかあったのか?」


一個目のパンを食べ終わった吉田さんは、真面目な顔で言った。

悩みを聞いてくれようとしているのは本当に嬉しい。けど、本当に何かあったわけじゃない。

何も言えず押し黙っていると、ふと深谷君の事が頭をよぎった。


「恋が、うまくいかなくて」


とんでもない嘘をついてしまった、と心臓がバクバク音を立てる。

こんな嘘ダメに決まってる、と思ったけど、吉田さんとの会話を終わらせたくなかった。