貴方と月と、少しの勇気と。



「なんかお前、暗い。ちゃんと前向け!」


パチン、と両方のほっぺたを手で挟まれた……と思ったら上を向かされた。

先輩とバッチリ目が合った。目の前に広がる先輩の顔に頭が混乱する。

よく見るとこの人の顔、すごく整っている。不細工な自分が恥ずかしくて俯きたいけど、先輩の手はそれを許さない。


「俺、吉田誠(よしだまこと)。お前は?」

「相沢です」

「下は?」

「……日向、です」


私は堪えきれず目をそらした。吉田さんはビックリするくらい真っ直ぐな目で話してくる。

吉田さんは首をかしげた後、手を離した。


「なんでそんなに自信なさげなんだよ」

「名前負けしてて……」


身が自由になった私は再び俯いた。

日向なんてかわいい名前、私には似合わない。自己紹介の時はいつも恥ずかしい。

でも吉田さんはため息をついた後、思いもよらない事を言った。