貴方と月と、少しの勇気と。



一瞬不法侵入の事を怒られてるのかと思ったけど、多分違う。
大方、私があんな淵ギリギリに立ってたから、自殺と勘違いしているんだろう。


誤解です、と言おうとした時、先輩は真剣な目で口を開いた。


「自殺なんてするなよ。何かあったか?」


一瞬、ドキリとした。
私の顔をのぞき込む目が、あまりにも優しい。

もちろん、誤解なのだけれど。


でも別になにかあったわけじゃない。ただ景色が綺麗だったから見とれていただけ。


でも先輩は本気で心配してくれているみたいで、とてもじゃないけど景色が綺麗だったんですなんて言えない。


「えっと……」


なんて言うか迷って俯く。

すると、先輩が舌打ちをした。