ふありside


「ずっと風愛梨だけ、好きだよ」
「先輩っ…。」


「ふぇ~~ん。先ぱぁ~いっ。」
「いい加減泣き止みなさいよ、もう3日目よ?はぁ~」
私、春野 風愛梨【はるの ふあり】は、3日前まで付き合っていた菊地 風太【きくち ふうた】先輩にフラれてしまった。
「大好きだったのにぃ…。それにっ、先輩も言ったもん!風愛梨だけを好きって!こんなに好きになったのは風愛梨だけって。なのに何でぇっ」
いつまでも泣き続け、同じ言葉を繰り返す私に、心友の田上 唯香【たのうえ ゆいか】は、呆れた様子で何度目かのため息をついた。
唯香は、黒髪美少女で、クールな感じで背が高い。私は真逆で、名前の通り、性格も髪の毛も、ふあふあしてる、ってよく言われる。
「はぁ~。私あんたらが付き合い始めた時から言ってたよね?菊地先輩はチャラチャラしてるからやめとけって」
「だって風愛梨だけは違うって思ったもん!!一生一緒にいるって言ったもん!」
思い出すとまた涙が出てきそうだ。
「はぁ?そんな言葉、信じられるわけないでしょ。女慣れしてるんだから、女が喜ぶ言葉くらい知ってるわ、あの男は。」
そ、そんなぁっ…。私は本気だったのに。
「もぅ、そんな泣いてる暇あったら次の恋に行けばいいじゃない!」
次の…?
「新しい…かれ、し?」
私の頭の上に、ひらめきマークが浮かんだ。そうだ。失恋を癒してくれるのは、新しい恋愛だよねっ!
「そぅだねっ!!さすが唯香っ。じゃあ、次の恋、探してくるよ!!」
駆け足で教室を飛び出し、廊下をスキップで歩く。
何だろう、周りの視線が痛い…。
グイッ
「ぴゃっ!?」
急に腕を引っ張られ振り向くと、そこにはカッコイイ黒髪の男の子がいた。
「これ、落としたよ」
にこっと笑い、私が落としたハンカチを差し出してくれた。
「あ、ありがとう…。」
え!?これ?これが新しい恋?神様は私にチャンスをくれたの?
何て考えてると、
「んじゃ、気ぃつけろよ?」
ぴゃぁーっ。王子様が去ってしまうぅ!
「だっ、だめ…。あ!あのっ!!!!」
私の大きい声に、不思議そうに振り向く王子様。
「えっ…と。」
やば…。何も用事ないんだけど引き留めちゃった…。何て言おう、何て言おうぅ…頭の中はグルグル大混乱。
「…っ好きですっっ!」