第二秘書は恋に盲目

「見返り、ですか。
それは…、お金ということでしょうか」

『お金なんていらないよ。

今度俺が泊まりに行った時にさ、部屋においでよ。
楽しくお喋りでもしようじゃないか』

「あ、あの…」

ここの社長、噂には聞いていたけど本当に女好きらしい。
そんな要求受け入れられないし、もしもそんなことして桐山社長にバレたらせっかく繋がったクビの皮が切られてしまう。

だけどこのままじゃ宇賀社長の協力は得られない。
藁にもすがる思いで手もとのファイルに目を落とした。

あ…。

このファイルには、住所や連絡先だけではなく、他にも独自に得た様々な情報がまとめられている。そこには『弱味』という欄もあって、その欄の意味を槇島さんに聞いたことがある。
すると槇島さんは、使い道なんて山ほどある。取引に必要になったら活用しろ、と淡々と言っていた。

私はその時、そんな悪趣味なこと出来ないし、したくないと眉をひそめたんだ。

だから、これを使うのには抵抗がある。
でも……。

……もう迷ってはいられない。本意ではないけど、こうするしかない。