感情にまかせて突き飛ばそうとした時、今まで見たことのない真剣な目をする孝宏さんが視界に入った。

……。
私は大人しく力を抜いた。
睫毛の影が落ちる伏し目がちな瞳。私を睨む時とはちがって、その目はちゃんと信頼できる医者のものだった。

う…。
再び身体に緊張が走る。
ひんやりした手が腹部に触れたから。
これはやばい、緊張する。ドキドキしてる。
…いや、このドキドキはときめいたとか、そういう物ではなく。

なぜかそう自分に言い聞かせて、孝宏さんが何か言うのを待った。