第二秘書は恋に盲目

「もう帰るの?って、こんな時間。
明日も早いんなら仕方ないわね。

千歳ちゃーん、孝宏帰るって。
送ってもらいなさーい!」

ギクッ!
不穏な提案に背筋が凍る。

「い、いや、大丈夫ですよ。
まだ電車走ってますし」

「何言ってるの、最近物騒じゃない?
さっき孝宏が言ってたけど、千歳ちゃんの勤め先の近くで刃物を持った男が捕まったって」

な…!!
それ私が刺された事件を物凄く大雑把にまとめたものだよね?
かなりギリギリの線を攻めてくるじゃないですか…。

「そうだぞ千歳。
一人で帰るなんて危なすぎる。
せっかくだから送ってもらいなさい」

両親から言われたらもう、これ以上逆らうことはできなかった。

「…お願いします」
「構いませんよ」

その返事は信じられないくらいに穏やかな声だった。
だけどそれが逆に恐怖心を煽る。
考えたくない。
今から始まるのは地獄のドライブだ。