第二秘書は恋に盲目

それから様々な質問をしてわかったことは、笠原さんが社長秘書をしており、その主な仕事が社長の娘であるあやめちゃんの家庭教師。
今日戻って来ないと、別の家庭教師がつけられるからどうしても仕事に行きたかったと。
笠原さんも笠原さんだが、桐山社長もなかなか無茶なことを言う。

「事情はわかりました。
ですが、傷口が開いて運び込まれたあなたを再び手術するのは面倒です。
無理はしないでください。
それと、近いうちに病院に来てください。

入院ではなく通院に変更しますから」

「え、本当ですか?
須藤先生、ありがとうございます!」

何を笑顔で喜んでるんだよ。
そもそも、病人を働かせようとする社長の理不尽さに怒りが芽生えたりしないのか?
お人好しにも程がある。

「まぁ、あやめちゃんも、笠原さんを労ってあげてください」

「別に私は笠原がクビになってもよかったんだけど。

でも須藤先生がそう言うなら、仕方ないか」

ひどい言い様だな。
笠原さんが無理をしてでも病院を抜け出して、仕事を全うしようとしたのは、この子のことを思ってだろうに。
この、ませてひねくれたお嬢様の為だろうに。