第二秘書は恋に盲目

その日の夜。
白衣からスーツに着替えた俺は、ホテル日帝に足を運んでいた。
何もかもがきらびやかで、いつも殺風景な病院にいる身としてはかなり落ち着かない。
目に悪い。
だけどこのどこかに笠原さんがいるはずだ。

横を優雅に通り過ぎようとした年配の男性スタッフを掴まえ、笠原千歳の名前を出して、俺が医者であると身分を証明した後、居場所を聞いた。
するとその人はインカムで誰かと少し話した後、こちらですとエレベーターに乗せられた。

「お医者さんって、こんなことまでされるんですか。
大変ですね」

「滅多にしませんよ」

滅多にどころか1度もねぇよ。
わざわざ俺が患者を探すことなんか、一生に1度もあってたまるかよ。

…なのに、何をやってんだ。
八田がこんなことをする俺を珍しいと言っていたが、全くもってその通り。
だけど、もちろんそこにはそれ相応の理由が存在しているわけで。
きっと笠原千歳以外の患者なら、看護師に行かせている。