第二秘書は恋に盲目

「千歳ー、母さんが珈琲入れてくれた。はい」

何の理由もなく部屋を訪れるのも気が引けたから、自分で入れた珈琲を持っていった。

「ありがとう」

「あのさ…ごめん。さっきの兄貴との会話聞こえちゃったんだよね…」

それを聞いた千歳は驚いたような、困ったような顔をして俺を見た。

「え…。そっか…」

嘘をついてしまった。
何が聞こえただよ。がっつり聞き耳立ててたくせに。
そんなふうに心の中で自分に突っ込んで、罪悪感から逃れようと試みる。

「驚いた。兄貴、ぜってーそんなことしそうにない人だから。
いつの間にそんな仲になってたの?」

俺は一つずつ、探るように聞いていった。
もう二人の関係は明らかなんだ。となると、俺の知らない間のことが気になってきたからだ。

「…少し前に訳があって、孝宏さんのいる病院に入院してたの。まだお父さんの再婚を知る前なんだけど。

それで、家族になってからも偶然が重なって会うことが多くて…、距離は縮まっていったかな。仲良くなったっていうのとは、ちょっと違う気がするけど…」

再婚前から知り合いだったのかよ。あのときが初対面じゃなかったんだ。