第二秘書は恋に盲目

「あ、あやめちゃん?どうかしたの?」

八田先生が若干心配そうに聞いてくる。

「いや、ちょっと走りたくなっただけだから。
それより、ここで集まって何してるの?」

「君は誰かのお見舞いに来たのかな?病院で走っちゃいけないよ。
先生たちは今から大事な話があるから、他の場所に行ってなさい」

世話や屈めて、急いで私を追いやろうと作り笑いを浮かべる金子先生。すぐに須藤先生のミスを報告したくて堪らないんだろう。

「須藤先生ー!おせーよ、待ちくたびれた。
時間に遅れるなって、あんたが俺に言ったんだろ」

皆が一斉に私の方から病室へと振り向く。
もちろんそこには、今さっき姑息な手を使って病室に戻った明石と付き添いの松井がいる。

「な…んで。いつの間に…!」

「明石。そんな堂々とベットに座ってる立場じゃねーだろ、お前は」

「わりー、わりー。
試合に勝ったから盛り上がっちゃって。
けど、ちゃんと帰って来たんだからセーフだろ」

「何がセーフだ」

明石は調子がいい奴だ。ほんの数分しか見てないけど、それがよくわかった。

「金子先生、ごめんねー。あんたの思い通りに動けなくて」

明石の言葉にギクッという擬音がつきそうなくらい、金子先生は表情を強ばらせた。