第二秘書は恋に盲目

先輩医師から、でかい態度をとるな、なんて怒りのこもった目で言われることはあっても、本音でぶつかられることはない。
生意気な俺をどうやって蹴落とそうかと企む奴等がそこらじゅうにいる。
そんな中で互いに素直になるなど、致命傷だ。

「…おい」

気が付けばグラスを空にしてカウンターに突っ伏している。

肩を叩いても身体を揺らしても起きる気配がない。

だから言っただろ。飲み過ぎだって。

「もう帰るぞ」

「先に帰っていいですよー」

目を瞑ったまま微妙に笑みを浮かべている…。

付き合いきれない。
そのうち目が覚めれば1人で帰るだろう。家までそう遠くもない。

そう思って店を出ようとするのだが…。
出る直前に目に入ったのは、千歳を見ながらニヤつく大学生らしき男の集団。

あいつらは一体何を考えているんだか。