「男に生まれてたら良かったなー。
そしたら何も言われないし、思われなかったのかも…」

目を伏せて話す千歳に、いつもの明るさはない。そこに、彼女の抱える問題の重さを知る。

女ってだけで虐げられることもある、か。実力を見てもらえないこともあるんだろうな。

俺が今、病院の最前線で医者として働けるのは、俺が男だからだったりするのか?
男の場合、結婚せずに仕事をやってると、それはそれでプラスの評価を得られることも少なくないけど。

なんてな。
年齢で能力を測られる時もあるが、その度に意地でも実力を認めさせようとしてきた。それがあったから今の俺があると思ってる。
そこで負けてるようじゃ前には進めないんだ。
食らいつくしかない。

千歳だって、わかってるだろうし、そうやってるに違いない。

「誰が何と言おうと気にするな。言いたい奴には言わせておけばいい。

不安でもなんでも、必死にしがみついてるお前の生き方はカッコいいよ」

千歳は伏せていた目をばっと上げた。
頬を赤くさせて瞳もぼーっもしてるけど、俺の言ったことは一応理解できたらしい。

「本当ですか?
孝宏さんにそう言われると嬉しいな。
ありがとうございます」

本当に嬉しそうに笑顔になった。