第二秘書は恋に盲目

そんなことを考えながら、にぎやかな街を人の間を縫って進む。

その途中で誰かにぶつかった。
謝らなくちゃ、そう思ったけど…。

「…うっ。…」

口から出るのは呻き声。
大勢の人が行き交う街中、勤務ホテルのすぐ目の前で…私は体への衝撃と痛みに耐えきれず倒れ込んだ。

左脇腹に激痛が走っていて体を動かせない。倒れる瞬間に視界の端に捉えたのは、誰かの手に持たれたナイフだった。

周囲の人が駆け寄って来るのがわかる。
彼らが私に掛ける大丈夫ですか、という声はかなり焦っていて緊迫感がある。

相当やばい状況なのかもしれないな、なんてどこか他人事のように思いながら、だんだんと意識が朦朧としていく。
軽くパニックになっている周囲の声も遠くなっていく。
やばい…。このまま死ぬのかもしれない…。
やだな…。今日から新しい一歩を踏み出し始めたっていうのに…。

お父さんの再婚を聞いて考え事なんかしてたから、不審者に気づけなかったのかな？
直接お祝いしたかったのにな…。
こんな最後…、望んでないよ…。


そして私の意識は闇に包まれた。