第二秘書は恋に盲目

「さすが桐山社長よね。こんな家具、一体どうやって手に入れてるのかしら。

こんな家具たちが身近にある環境で働けるあなたが羨ましいわ。

私ね、フリーで空間デザイナーをしてる絵美って言うの。
仕事をくれる人なら誰にだってついていくのだけど、桐山社長は別格よ。私の身体を疼かせる家具ばかりを扱わせてくれるんだもの」

「は、はぁ。なるほど」

無視する訳にはいかないから、なんとなくの返事をしてみるものの…。
またキャラの濃い人が登場した。

まるで舞台上で演技をする女優のように、あちこちの家具を行ったり来たりして話す絵美さん。

「見てこのドレッサーの質感、そして手触り。新品の家具にはどう頑張っても出せないわ。

こっちのチェストの存在感もたまらない!この近づかないとわからないような繊細な模様に、職人のプライドを感じるわ。

そして何よりソファーよね!腰を下ろすだけで一気に貴族になった気分だわ。こんなソファー、めったにお目にかかれる代物じゃないわ。

あー、目を閉じればそこはもう、煉瓦造りの古い建物が建ち並ぶ中世のイギリス。どこからか鐘の音が聞こえてきそうだわ。

ね?そう思わない?」

最後に立ち止まったのは私のすぐ目の前。
息がかかるほど近い距離。