第二秘書は恋に盲目

「それと、8月に入ったらアメリカの例のセレブが家族を連れて来日する」

「毎年恒例の歌舞伎ですね。手配済みです」

そのセレブは毎年来日の際には、ホテル日帝を利用してくれている。彼は歌舞伎が大のお気に入りで、おもてなしとして良い席を手配するのがこちらの仕事となっている。

「歌舞伎か…。
今年は子どもも一緒に来るんだろ?他にも何か用意しておくべきだ」

「はい。以前、子どもは派手なものが好きなんだとおっしゃっていたそうなので、ちょうどその日にある祭りを提案しようかと。お神輿をすぐ近くで見られるお店を取ってあります」

「有りだな。
よし、ちょっと出掛けてくる。何かあれば連絡してくれ。
それと、車を回させろ」

「既に玄関前に待機してます」

「…よし」

社長の、どうしたんだこいつ?とでも言いたそうな目を、私は見逃さなかった。