第二秘書は恋に盲目

……。
ふざけんな。
冗談じゃねーよ、これ。

運転しながら助手席に座る千歳に対してひたすらに苛立ちを向ける。
あやめちゃんは、いつの間にか後部座席で寝息を立てている。

赤信号で停止した静かな車内には、握ったハンドルを人差し指で叩き続ける苛立ちの音だけが鳴っている。
そんな俺からの殺気にも似た何かに気づいてか、一切こっちを見ようとせず、窓の外ばかりを眺めている。

特に何もないが咳払いをしてみると、肩をビクッと震わせて、数秒後にそろーっとこっちに顔を向ける。そして、すぐに外へと視線を戻す。

そう怯えられると、もっといじめたくなるだろ。

気がつくと、俺は視界の端に千歳を捉えながら自然と笑みを浮かべていた。