「あやめちゃん!!」

その時、より大きな声が俺達に届いた。
この声は見なくても誰なのかくらいわかるのだが…。
一応振り向くと、彼女を落ち着かせようとする3名の看護師を振り切って、こちらに駆けてくる千歳。びちゃびちゃと足音を立てている。

…なんでずぶ濡れなんだよ。
あぁ、外は雨か。
だから看護師はタオルを持って、千歳を追いかけているのか…。

なんて、妙なところで納得してしまった。

「よかったぁ。
大丈夫なの?
どこ探してもいないし、そしたら、あやめちゃんが病院に運ばれたって聞いたから…すっごい心配したんだよ」

相当走ったのか、息を切らしたままあやめちゃんの前にへたりこんだ。
耳を澄ませると、外のどしゃ降りの音が聞こえる。
こんなひどい雨の中、傘無しで動き回るなんて、体調崩しても文句は言えないぞ。