第二秘書は恋に盲目

しかし、社長には社長の考えがあり、それを曲げる気はないみたいだった。

「言っておくが、社会で上を目指すなら、思いやりなど何の役にも立たないぞ。むしろ障害だ。

俺がいなくてもあやめは賢く育ってるじゃないか。何の問題もない。
俺はこのホテルの社長だ。喜びも感動も幸せも全てビジネスに繋げる世界にいる。家族だからと特別扱いするほど甘くはない。

もしお前が本気で第一秘書を目指しているなら、もっと全体を見渡せるビジネスの目を育てろ。
それが嫌なら別の道を探せ」

駄目だ…。
ここでは私の要求もあやめちゃんの気持ちも全く通用しない…。
ごめんね、あやめちゃん。
勝手なことしたのに、何の力にもなれなかった…。

「他に用が無いのなら戻れ」

「…はい……」

脱力感を必死で堪えて社長室を出る。
もう今日はここにいたくなくて、さっさと帰る準備をして、外へ向かう。