第二秘書は恋に盲目

「笠原、どうしてあやめの家庭教師に自分の秘書をあてていると思う?
それは、俺のスケジュールを間近で見ている秘書なら、俺が仕事であやめに構えなくても、それなりに上手く事を運ぶだろうと考えているからだ。
実際、歴代の第二秘書はあやめを上手く言いくるめていた。間違ってもあやめとの時間をつくれと意見してくる奴はいなかった。そんな時間など無いと、はじめからわかっているからだ」

そうだけど…。社長は毎日忙しくて、1日の動きを見ても仕事の関わらない時間など無いに等しい。仕事をするか寝ているか、というような人だ。
わかってるんだけど…。

私の言ってることは、おかしいのかな……。

「あやめちゃんは社長の娘ですよ。社員と同じように接していては、いつか……」

いつかあやめちゃんの心が壊れてしまう。

私は下河さんのことを思い出していた。あの件では完全に下河さんに非があったのは言うまでもない。だけど、もしもあやめちゃんが何かの間違いを犯したとき、社長は同じように切り捨てる叱り方をするような気がしてならない。