隣の席の矢野くん。




「何から伝えたらいいのか、分からないんだと笑っちゃうかも知れないけど、雨宮さんの前だと俺は俺らしく出来なくなる」


いつもと違う、少し低い声が私の耳を擽る。


全部の聴力が、矢野くんの声だけに集中する。


「いつもどう話してるのかとか、色々分からなくなる程緊張する」


「……矢野くんが?」


「はは。俺だって人間だよ?緊張する事もある。でも、雨宮さんの前だと変に緊張するんだ」


私と、同じだ。


私も矢野くんの前だとどうしたらいいのかわからなくなる。


矢野くんの前だと、何を話したら喜んでくれるのかなって考える。