「ようこそ、お越しくださいました。高澤様。部屋の温度を上げておきましたのでご安心してください。」


扉の前にいたこの男性……確か理央兄の代わりにユリに付いている執事さん?


「お祖父様 、ここから先はお願いいたします。私は本家へ戻り奥様と優莉お嬢様の様子を見てまいりますので。」


一瞬で砕けた雰囲気から執事らしい振る舞いになった。


さすがだな。


「葵様、こちらは私の祖父であり、会長様と優莉お嬢様の執事を兼任されております、秋本広大です。」


「今後もお会いすると思います、高澤様。」


玲央がこの歳になったらこんな感じに老けるんだろうか。


面影があり、立派な方だ。


「では失礼いたします。」


玲央は急ぐようにヘリに戻っていった。


「ではここからは私がご案内いたします。原則秋本家の方に会うには私たち桜井の人間がそばにいないと会えないことになっておりますので。」


そういえばそうだ。


真理亜がパーティーに参加したとき理央兄がいた。


「高澤様、ご覚悟を。」


なんだか刀で切られるときのようなセリフで扉が開けられた。





そこはシックな雰囲気にまとめられた部屋だった。


応接室だろうか、社長用の机椅子以外に、ソファーがいくつかある。


「失礼します。」


気を引き締め一礼すると、執事さんとソファーに座っていた男性がさっと立って軽く礼をしてきた。


顔を上げようとしたとき、急に冷気がブワッと流れてきた……。