仕事が片付いたのは夜9時ごろ。


「やっと………終わった………!」


執務室の椅子は無駄に座り心地がいい。


背もたれにどかっと、もたれかかった。


「これで終わりです、葵様。」


「………長く拘束して悪かった。明日は有給とったらどうだ?」


「………もったいなきお言葉。ですが、私は明後日いただいております。大丈夫でございますよ。」


ちゃっかりしてんな、コイツ。


「葵様、お忘れかと思いますがパーティーの招待客の件で……。」


うわ、すっかり頭から抜けていた。


普段全く参加しねえからすぐ忘れる。


「………ノータッチだよな。」


「………ええ。とてもじゃないですが今日の書類の量で、こちらは手を回せていないです。」


明日の分は少ししか終わらせていない。


しょうがねえな………。


「北原。パーティーの件は明日に回す。明日招待客のリストを漏らさず教えてくれ。」


「かしこまりました。それでは失礼いたします。」




丁寧に腰を折り、北原が完全に出ていったところで、俺は携帯を確認した。


「………ユリから着信なし……か。」


着信があったのは玲央だけだった。


とりあえず玲央にかけてみるか………。