我が家のかかりつけ病院の屋上に着くと、院長である英彦さんが迎えてくださった。


「大叔父様!お忙しいのに………。」


「気を遣わんでくれないか、ユリさん。私の大事な姪っ子とその娘だぞ?」


わざわざしゃがんで私に目線を合わせてくれる。


いつまでも屋上で話しているわけにはいかないので、大叔父様に手頃な部屋に案内してもらった。







案内してもらったのは、関係者以外立ち入り禁止のすごく豪華な造りの部屋。


お母様とお父様は私が入院した時によく利用していたそう。


専用の鍵も貰ってしまった。


「ユリさんも傷の具合はどうかな?報告が最近音沙汰だから心配していたんだよ?」


お母様は先ほど無事に出産が終わったけど、まだ片付けに時間がかかるとのことでこの部屋で待つことになった。


「痕は残っていないし大丈夫よ。お母様の主治医さんは腕が確かなのね。」


「奈々子様の主治医の息子だからな。誠一郎様の圧力がのしかかっているんだろうな。」


何でもないように話しながら紅茶を淹れてくれたけど………。


「………大丈夫なのですか、そんなプレッシャー?」


「もう慣れたそうだ。ユリさんだって兄貴の威圧感に慣れただろう?」


そう言われれば……まあ………


「兄貴はユリさんをよく可愛がってるから安心しなさい。頼れると思うよ。」


「でもお仕事もお仕事だからなかなかそうは……。」


警察官をまとめる立場の方なのに………。


俯きかけた私の肩をポンポンとあやすように叩いた。


「………大叔父様?」


「………頼られないのも嫌なんだよ、ユリさん。」


えっ、と声を発する前に大叔父様は席を立った。


「そろそろ行こうか。荷物はそのままでいいから。」


私に向けてくれた笑顔はどこか寂しそうだった。