-ユリside-


裃学園の始業式はとにかく遅い。


4月半ばからスタートする学校なんてなかなかないんじゃないかな。


まあ………教養テストがあるから抜かりなくいかないといけないのはその代償かな。






4月に入ったのでそろそろ寮へ戻る準備を始めようと部屋にいた私をメイドが呼びに来た。


メイドさんがいることに慣れてしまったな………。


甘やかされた人になりそうで怖い。


「お嬢様、奥様がご出産されそうとのことです。直ぐにお呼びするようにと、主治医の賢吾さんからのご通達です。」


お母様が!?


「ありがとう、直ぐに行くわ。ヘリ回せる?」


病院は都会の真ん中だから渋滞に巻き込まれちゃう。


お祖父様たちに遠慮なくヘリを使えって言われているから使っちゃおう。


「準備は出来ております。ヘリポートへお急ぎくださいませ。」


身支度を急いで済ませ、メイドの後を急いで追った。






「こちらです、お嬢様。お急ぎを。」


今まで壁だと思っていたところを、メイドは力一杯スライドさせた。


途端に強風が建物内に侵入してくる。


………我が家にヘリポートなんてあったんだ。


メイドさんの案内で屋上に着いた私は、ヘリの強風に煽られながら顔が引きつりそうだった。