「まあ……他の仕事もやってはいるんだけどね。夏菜に話さなかったのは権利のの問題だ。」


仕事の特有上、特殊な権利が多く発生する。


利益の大きなプロジェクトはそれだけ盗作や狙われる危険も多いんだそう。


「だからもし何かトラブってそれが夏菜にまで魔の手が及んだらと思うとなかなか話せなかったんだよ。

まだ学生だし、うちは資産家としても名を知られてるからね。………負担をかけたくなかったんだよ。」


「お兄様………。」


結局………ユリのご両親たちと同じなのかな。


ユリの素性がバレないように必死で隠してきた莉依紗様たちと。


「親はたぶん今頃家に帰っていると思う。会うの久しぶりだろ?」


お兄様は私の方へ腕を伸ばし、目元に手をやった。


………涙?


いつの間にか私の隣に座っていたお兄様がそっと私を抱きしめて、背中を撫でた。


懐かしい………。


親が仕事でいなくて寂しい時、悪い夢を見て寝れなかった時。


抱きしめて背中を撫でてくれたのは………この大きな手。


「話さなかったこと、許してくれなくていいから。……だからこれからも守らせてくれないか?」


「うん………お兄様………。」


なんだかんだ言っても、私もお兄様が好きなんだ。


シスコンでも女誑しでも………お兄様はお兄様。


………遥先生でも紹介しようかな………。







兄と和解したのち、お兄様はまた海外出張に出かけてしまった。


でも、お兄様に会えてよかったな………と思えた数日だった。


-夏菜side end-