「穂花ちゃん、傘使って?…那留くんと」 「え?」 「那留くんも傘持ってないって、聞いて。私は折り畳みがあるから」 穂花ちゃんは、唖然として私の手の傘を見ていたけど、迷いながらも、受け取ってくれた。 「ありがと、実湖」 「ううん。お礼、橘くんに言ってあげて。橘くんが、気づいたから」 「光樹?……分かった。ありがとね!」 穂花ちゃんは、傘を受け取ってから、緩む頬を押さえられないようにニマニマしながら、空を見上げていた。