ノックの音に振り返ると、
愛する人がそっと顔を覗かせた。


「――手、痛ぇ。この扉、意外とかたいのな」

「バカ。」


真っ白なドレス姿、褒めてくれなかったのはちょっと寂しかったけど――
颯斗(ハヤト)だから仕方ないか。

ドレスがよれてしまわないようにちょこちょこ近づいて、颯斗の手をそっと握った。

「まだ痛い?」

見上げると、高い高いところにある颯斗の顔。
それは、ちょっとだけ苦い顔をしていて。


「ちょっと…そんなに痛いの?」

「和葉(カズハ)。」

「ん?」

じっと見つめると、照れたようにちょっと頬を赤くして、ちょっと可愛くて、やっぱりかっこいい颯斗。

身内の欲目かしら…そんなことを思って、“身内”になったということに、つい微笑んでしまう。


「―――なんでも、ない。」



どうしたんだろう?

そう思ったとき、
式場のお兄さんがきて、始まりを告げた。