「お前らは誰だ!名乗れ!」
ルイスとミキナの前に立ち塞がるのは、今飛び込んだマリナスの町の武装した住民。
五人くらいの男が槍をいつでも二人を刺し殺せるように構えている。
「…俺はルイス、この子はミキナです。」
ルイスは微笑みながら丁寧に答えた。
こういう場合は下手に隠さず、相手にいい印象を与えておくに限る。
「フルネームで答えろ!」
五人のリーダーなのか、一番図体のでかい男が怒鳴って指図する。
「み、ミキナ=ノマディスです。」
ルイスの手をしっかり握って、ミキナは怯えながらも男に答えた。
「ノマディス?あの遊牧民か…。お前は??」
男は今度はルイスを見る。
「………ルイス、」
一瞬ルイスは躊躇いがちに言葉を止め…
「…ルイス=リクディム。」
はっきりと、名前を言った。
ミキナが驚いて目を見開いたが、男は気付かずにルイスを睨む。
「リゼルク村の者ではないだろうな?」
「はい。ただ旅をしているだけです。リゼルク村には行ったこともありません。」
男の目を真っ直ぐ見つめてルイスは言う。
「…ならばよい。入れ。宿ならすぐそこにある。」
「ありがとうございます」
軽く頭を下げたルイスはミキナを引っ張って歩みを進めた。
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