「ショウ!」
やってくる盗賊を倒しつつ、ルイスは逃げ惑う人混みに流され見えなくなりつつある黒髪の青年に呼び掛けた。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
ミキナが飛び出そうとするのを抑え、ルイスは最後の盗賊を吹っ飛ばした。
息を切らしながらも、慌てて人混みを追う。
「どうしよう、はぐれちゃった!お兄ちゃん!」
泣きそうなミキナは既に陸地へ降り立っている人混みを、船の甲板から見下ろして兄を探していた。
「ショ…」
ルイスが名を叫ぼうとしたとき、爆発音のようなものがした。
「!!」
船が動いている。
さっきのはエンジンをかけ直した音だ。
盗賊の残りが船を占領していた。
操縦室と食堂を、別れて襲っていたようだ。
「ミキナ、荷物!ショウ、のも!」
「う、うん」
ダッシュですぐそばの客室に入り、三人の荷物を全部引っ張り出す。
「陸地が、近づいたら、飛び降りるよ」
「わかった。…ルイス、大丈夫?」
まだ息切れしている少年を、心配そうに見上げた。
「うん。行くよ。」
「ひゃあっ」
ルイスはミキナを抱き抱え、荷物を腕に引っかけると勢いよく飛び降りた。
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