「…あ、あの、言いたくないならいいの。」
耐えきれなくなって、ミキナは慌ててそう言うと俯いた。
「…ルナティアにはさ。」
急にルイスが口を開いた。
ミキナは下を見ていた顔をあげる。
「不思議な力があるんだ。月の自然を操る力。それを使うとき、紫の瞳は蒼色になる。」
「自然って…。風だけじゃないの?」
首を傾げたミキナに、ルイスは天井を見たまま左腕を額にのせ、真剣な顔をする。
その横顔に、ミキナは少しどきりとした。
「水とかもできるよ。でも月の自然、だから。水道水とかじゃ駄目だけど。俺は風が得意なんだ。」
「そんなに凄いのに、何であたし達は何も知らないの?」
あたし達、つまり一般人。
ルナティアではない人。
「その力を恐れた移住民は、昔ルナティアを大量虐殺した。その事実を隠す為に、学校では何も教えない。きっと、そのことを知ってる教師はほんの少ししかいないよ。」
「…でも、ボスレアは。知ってたよね?」
「うん。あの人は貴族の中でも上の階級だったんだ。そういう人たちは、ルナティアの存在を知っている。」
そこでルイスは、視線をミキナに移した。
「…その人達はどうして知ってるの??」
「……。」
哀しそうに目を伏せたルイスを見て、聞けるのはここまでだとミキナは諦めた。
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