「俺目当てでミキナを誘拐したの?」

片足を床にトントンとつけ、ルイスが微笑んだままボスレアに訊く。


「そうですね。それになかなかだったので買い取ろうと思いまして。まぁ、やめましたが。それは貴族を侮辱した。」

「…相変わらずだな」

笑顔が呆れたような表情に変わる。


「貴方様も。貴方が友達になんてなるからそう言った調子にのる庶民が出てくるのです」

「調子に乗ってんのはお前だろ?」

ルイスは言葉と共に短剣を構えた。

カラコンを外し、元の綺麗な薄い紫の瞳に戻す。


「…ルイス」

不安そうな声。

振り向いたルイスは、ショウに抱き締められながら見上げるミキナと目が合うと、優しく微笑んだ。


「大丈夫だよ」


「…私とやり合うのですか?優しい貴方にそんなことができるのですか?」

短剣を眺めながら、ボスレアが言う。


「お褒めの言葉ありがとう。けど俺、殺るときは容赦なく殺すよ。」

ルイスが微笑みながら言った。


その冷酷な瞳にミキナは寒気を覚える。

(トゥメニスの宿の屋上で一瞬見た、あの目だ…)

無意識に、自分に回されたショウの腕を握っていた。



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