「モナキス…馬鹿が。」
伸ばしていた手を引っ込み、ボスレアが呆れた様子で戸口を見た。
ショウは直ぐ様ミキナに飛び付く。
「ミキナ!大丈夫か?!何もされてないよな?!」
「う、うん。お兄ちゃ…っ」
泣き出したミキナを抱き締めながら、ショウは縄を解きだした。
「やめろ、庶民が。それは貴族を侮辱した。許しがたいカスには私が体裁を下してやる。」
そう冷たく言い放ったボスレアは雇った男に指示し、男は縄を解く途中のショウに刃物を振りかざした。
が、それは呆気なく弾かれ、くるくる回転して空中を舞うと部屋の隅の床にトスッと突き刺さる。
「…ルイス様」
男を蹴り飛ばした金髪の少年に、ボスレアは目を細めた。
瞳はグレーだが、その綺麗な愛嬌ある顔立ちは確実にそれだ。
「…」
ルイスは無言でボスレアを見た。
(ボスレア=トルマルス…)
貴族では上の階級だ。
「トゥメニスで貴方を見掛けた時には驚きました。まさかあんな街中に堂々といようとは。」
「成り行きでさ」
にこっと微笑んだルイスは短剣を握る手に力を込めた。
.


