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その頃、トゥメニス内の高級ホテルでは二人の男が会っていた。


「こんにちは、ボスレア殿」

「ん、座れ」


青みの勝った黒髪を揺らし、座れと言われた男は素直に従う。



「モナキス、あの話だが。」

ボスレアと呼ばれた背の高い男は、黒髪の男が座ったのを確認するとすぐに切り出した。

「はい、わかっていますよ。これでしょう」

30歳くらいの黒髪のモナキスは、ボスレアと自分の間にある高級なテーブルに袋を置いた。


袋をひっくり返し、中身を出して確認すると、ボスレアはそれの一つを手に持って眺めた。



血のように真っ赤な石。



「これがあの『緋光石』か」

「そうです。ですが…、それを何にお使いになられるのですか?」

「お前は知らなくてもいいことだ」


冷たいボスレアの言葉に、モナキスは黙った。


「それで、いたのか?あの宿には?」

「…金髪の少年、ですか。いたのはいたんですが、瞳が違いました。あれはグレーで、あなた様の言う薄い紫とは違った。ですが…」

「何だ?」

言いよどんだモナキスに、ボスレアは片眉を上げた。


「いえ…、貴族の扱い方をわかっているっていうか。私がそれと一緒にいた庶民を少し…見下しまして。庶民が怒鳴って私に掴んできたのを、彼が止めました。そして、謝ってきたんです。」


モナキスの言葉に、ボスレアは少し反応した。


「ほう。…名前など、呼んでいなかったか」




「えっと…確か庶民が、『ルイス』と…」




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