「!ミキナ?!」
慌てて二人で駆け付けると、ミキナはショウに抱きついて震えだした。
「ミキナ?どうした?」
「……リ」
「え?」
「ゴキブリ!」
半狂乱で叫ぶミキナをおもしろそうに見てから、ルイスはその細い指が指し示す場所を見た。
確かに、いる。ゴキブリが。
しかもでかい。
「…キモチワルイ」
顔をしかめたルイスにミキナを預け、ショウはさっき彼が読んでいた新聞を丸めて戦闘体勢をとった。
一瞬そのポーズは何なんだ、と聞きたくなったがルイスはあえてスルーする。
「てぃやぁ!」
ショウが新聞を床に打ち付けパンパン鳴らす度に、ゴキブリはカサカサと逃げる。
「きゃああ~ッ!ルイス、こっち来た!いやああああ」
「ちょこまかうぜぇ~!」
もはやゴキブリしか見えていなかったショウの新聞攻撃が、ミキナを抱えながら黒い虫を避けたルイスの背中に当たった。
スパァン!と鋭い音が響く。
「いってえぇぇえ!」
ルイスは思わず叫び、しゃがみこんでしまった。
「あ、ごめんごめん!」
「いやああああ、ルイス、しゃがまないでっ!こっち来ちゃう~っ」
ミキナの絶叫と共に黒い虫が近づくと、ルイスは空いている左手でショウから新聞をひったくってそれ目掛けて振り下ろした。
ぷちっ。
ショウのゴキブリとの戦いは呆気なく幕を閉じた。
「あああああ!お前、俺が倒すのに!」
せっかく始末したのに、ショウは大人げなく叫んだ。
本当に二十歳なのかも疑わしい。
「はあぁ~、怖かったぁ」
ミキナはルイスにしがみついたまま安堵のため息を漏らした。
そして、異変に気付いた。
「……ルイス?」
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