首都の南に位置する『テブラン高原』の更に南。

そこに、スザン村はあった。


「着いた」

1日かけてずっと歩いたのにも関わらず、平然と少年は言ってのけた。

入り口がない為、普通に道から自然に入る。

「宿…宿…」

一歩歩くたび別の建物に目を移す。

「…宿ない。看板すらない。」

というより、家しかない。



どうしようかと悩んでいると、背の高いワイルドな黒髪の青年と、自分よりいくらか小さい茶髪の女の子がこちらに向かって来た。


それに気付いて、ジッと見つめる。


「お前、何だ?何でここにいる?」

目の前に来た途端、青年の方が口を開いた。

逞しい感じで格好いい。


「旅してて。宿ないんです」

少年は正直に答えた。


「旅?お前、名前は?」

青年は怪訝そうに眉を潜めて聞いた。


「ルイス」

少年、ルイスは答えた。


「ルイス、か。一人なのか?」

「そうだよ。宿、ないの?」

金髪を揺らし、首を傾げて自分より背の高い相手を見上げたルイス。


「宿はないな。なんせ遊牧民だから。よかったら長に相談するけど?」

そう言った青年は、優しい笑みを浮かべた。

「ありがとう。そうしてもらう。」

ルイスも微笑んだ。

愛嬌のある可愛らしい、でもどこか格好いい笑顔。


「おう。俺は、ショウ。こいつはミキナだ。」

ショウが指差したのは鎖骨くらいまでの茶髪の少女。

ミキナはジッとルイスを見ていた。

「?」

何故に見つめられているのかわからないルイス。

すると、ミキナは可愛らしい声で話しかけてきた。


「あなた、えと、ルイスって、貴族なの?」


「え?」



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