「でもここ変わってるな!買った食材を渡して料理を作ってもらうなんて聞いたことないよ」
幸せそうなルイスは笑顔でそう言う。
「あら、ルイスったら首都以外行ったことないのなら当たり前でしょう」
まだおしとやかをやめないミキナはほほほと笑った。
「ミキナ、やめとけ。気味悪いぞ!」
「気味悪い!?酷~い、お兄ちゃんの馬鹿ぁ!馬鹿馬鹿馬鹿ぁっ」
「静かにしてもらえるかな」
不意に知らない声がした。
ミキナとショウは一斉に声のした方に顔を向ける。
「うるさくて食事に集中できんよ。全くこれだから庶民は」
話しているのは豪華な服装に周りにボディーガードを引き連れた、高級ホテルでみた男とはまた違う貴族。
二人はあからさまにムッとした。
「何だよ、じゃあこんなとこで食べないであの高級ホテル行けよ!」
ショウが反抗すると、30歳くらいの貴族の男はゆっくりと二人に視線を移した。
「庶民が私に意見するとは。品のないカスどもが」
「何よう、あなた何様のつもり!」
ミキナがいーっと歯を見せてさらに反抗する。
「貴族様々だ」
かなり偉そうに勝ち誇った表情を浮かべる男は、青みの勝った黒髪をさらりと揺らす。
「様々ぁ!?お偉いさんなんだな!そんなやつは館か城にでも行っちまえ!!」
何やらキレてしまったショウは立ち上がって男を睨んだ。
男は表情一つ変えずにショウを見下す。
「黙れ、喚くな。食事が不味くなる」
「ムカつくーっ」
ミキナが言うと、男の視線が彼女に注がれた。
「ほぉ…、庶民にしてはなかなか上質な。買い取ってやろうか?」
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