「ルイスはさ、貴族なんだろ?どこの街に行ったことあるんだ?」

「……。」

ショウが聞いたのに、ルイスは外を眺めたまま答えない。


「ルイス?」

もう一度ショウが聞いて顔を覗き込むと、ルイスはふわっと穏やかに微笑んだ。


「住んでた首都以外、行ったことないよ。ショウ達のいた村がはじめて行った外の場所。」


「え!?ほんとか!?」

「うん」


微笑んだまま、ルイスは窓をパタンと閉めた。


「風邪ひいたら駄目だから」


不思議そうなショウに、ルイスは笑いながらベッドを指差した。



「あ」



ベッドには、布団も被らずに眠ってしまったミキナがいた。



 ――――――――


「で、どうすんだ?」

「二人が決めなよ」

「いいの?ありがとうルイス!」


ミキナが起きて、三人はトゥメニスでまずどうするのかを相談していた。

お父さんのデイトを探したいミキナは、ルイスが許可してくれたからかご機嫌で、早速街を歩き回りたいと言い出した。


「街を歩き回る?父さんがそんな街のど真ん中歩いてるか?」

「こそこそする理由もないでしょ?」

「ん~まぁそうだな」

「じゃあ、いってらっしゃい」

「え?」


二人はルイスの言葉を理解できず、同時に振り向くと声を揃えて聞き直した。


「俺はあの人に見つかりたくないからさ」


微笑みながら言うルイスに二人は今日高級ホテルで見かけた男を思い出す。


「何かルイスって貴族らしくないね」

ミキナが無礼なことを言い出した。

「はは、よく言われるよ」

「行かないのか。まぁ仕方ないな…。6時になったら帰るから、腹減らせて待っとけ!いいもん買ってくるからよ!」


そう言いながらちゃっかりルイスにお金を少し貰ったショウは、意気揚々とミキナと共に街に出た。


「…6時か。」

誰もいなくなった部屋で呟くと、座っていたルイスは立ち上がった。


今は、3時。

三時間余裕がある。



「俺も買わなきゃいけないものがあるんだよな」


そう言ったルイスは財布を手にとり、一人で宿を出た。





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