「あ?」


当然、急に話し出したミキナの言いたいことがわかるわけもなく。

ショウはイライラをそのままに、天井を睨んでいた視線を妹に向けた。


少女はやはり、こちらを見ていない。




「マリナスに入るときにね、検問があって。名前、聞かれたの」

「…………」

「ルイス、偽名を使ってた」



それでは話そうとしたことにはならないではないか。


そう言おうと開かれた口は、次の言葉に閉じられる。





「どうしても言えないの?って。訊いてみたの。そしたら、何か言おうとしてくれた」

「………ルイスが?」

「うん。…ちょうどリゼルクの人達が来て、結局聞けなかったけど」



お兄ちゃんが一緒のときにまた聞こうって、思ってたの。




囁いて、ミキナはまた閉口した。



まさかこんなことになってしまうなんて、夢にも思わなかった。




「………ルイスが皇子か」




確かに、自分の身分が皇子だなんて貴族を嫌う自分達には言えなかったのかもしれない。


それに何やら彼は、重罪をやらかしたようだし。