薄暗い、電気の点いていないこじんまりした部屋。
リゼルクの例のおばちゃんの宿だ。
「…ミキナ」
「…………」
「…おい、ミキナ」
「…………」
「………はぁ」
ルイスが連れていかれてから宿をとってすぐに寝て。
翌日に起きてから、ミキナはずっとこんな調子だ。
何も食べない、何も話さない。
そんな妹にショウはお手上げ状態だった。
「…なぁ、ミキナ。そんなんしてても何もなんねーよ」
「…………」
「しょうがねぇだろ。ルイスが自分で決めたんだ」
「…………」
「何も言わなかったあいつに怒ってんのか?」
「…………」
…やっぱり反応なし。
ベッドに伏せたミキナはこちらを見もしない。
どうしたものかな、とショウは溜め息をついた。
いい加減イライラしてきた。
ある意味ルイスへの嫉妬かもしれないが。
そうやってついつい舌打ちして貧乏揺すりなんぞをしていると。
「………ルイス、言おうとしてくれたよ」
ミキナのか細い声が、静かな部屋に響いた。