「あ、頭を上げてくれないかな……」



恐る恐る頭を上げた。


前髪で顔が隠れているから表情はよく分からないけど、怒っている雰囲気はない。



「出来ればその、あの……そのままでいてくれないかな?」

「え?」

「あんなふうに普通に話しかけてもらったのは初めてで、嬉しかったんだ。 それで、その……もし嫌じゃなければなんだけど、僕と友達になってくれたら嬉、しい……」



語尾がどんどん小さくなっていくにつれて、ランスロット王子の顔もどんどん俯いていった。


一国の王子なのに何て腰の低い……。



「私もランスロット王子とお友達になれたら嬉しい!」



私がそう言うと、ランスロット王子はパッと顔を上げた。


その勢いで髪の毛がフワッと浮き、一瞬顔が露わになった。


目を引くほどの美しさではないが、繊細で優しそうな顔をしていた。



「ありがとう!」

「お礼なんて止めてよ。 宜しくね、ランスロット王子」

「こちらこそ宜しく。 えっと……」



そう言えば名乗ってなかった!


私ってば本当にどこまで失礼な奴なんだろう……。



「私はエヴァ・スミス。 エヴァって呼んで」

「うん。 宜しく、エヴァ」



嵐の日を切っ掛けに、私たちは友達になった。