〝かわいそうにねぇ‥‥〟
〝まだ妹ちゃん5年生だってね‥‥〟
〝引き取り手もないみたいよ‥‥〟
〝上の子も高校生だって‥‥〟
〝仕事仕事のご夫婦だったしね‥‥〟
〝どーするのかしらこれから‥‥〟
〝施設しかないでしょ‥‥〟
〝上の子はともかく下の子が小学生だし‥‥〟
〝気の毒ねぇ‥‥〟




〝おねぇちゃー‥‥ん‥‥うあぁん‥‥〟



































「凛子!!!!」




ハッ‥‥




夢‥‥?





「どーした?大丈夫か!?」







気がつくと私をのぞきこむ陽輔の顔が何よりも先に見えた。





「陽輔‥‥」





「こんなとこでなにしてんだよ!!!!びっくりした‥‥」





陽輔は私の上半身を起こすとため息をついた。





「誰か倒れてると思ったら凛子だったからまじで焦ったよ‥‥」





あぁ、あのまま寝てしまったんだ。




「ごめん‥‥ありがとう。」





「どーした?何があった?もしかして、俺と会ったあとずっといたのか‥‥?」






陽輔は本当に心配してくれてるみたいでまだそんなに暖かくないのに少し汗をかいていた。






「‥‥ちょっとコロンって横になったら寝ちゃったみたい‥‥。」





「ちょっとコロンって‥‥女がこんなとこで‥‥ほんとに何も無かったのか?」






「うん、大丈夫、ありがとう。」





「送るよ、立てるか?」





「‥‥うん、」




体が重く立てるか微妙だったが、陽輔に手を貸してもらうと思ったよりもスッと立つことができた。

















「陽輔‥‥」





「ん?」








私の顔をのぞきこんだ陽輔の顔が高校時代の陽輔に見えてしまった。






なぜか自分も高校生に戻った気がした。












「‥‥ごめんね‥‥」





「‥‥‥‥‥‥‥‥りん‥‥こ?」





「‥‥私なんかと‥‥ごめん‥‥」





陽輔はさっきまでの動揺さを見せずだまって私の横を歩いた。









「‥‥私が‥‥私が‥‥ごめん‥‥陽輔‥‥ごめん‥‥」





自然と震える声に陽輔は何も答えなかった。






「‥‥近くの大学‥‥行こうとしてくれてたよね‥‥気づいてた‥‥ごめん‥‥こんな‥‥こんな私のために‥‥」






「‥‥俺は」






黙っていた陽輔が口を開いた。






















「凛子の隣にいたかっただけだ。」










陽輔はそう言うと足を止めて私の手をとった。












「俺は、お前に会いたくて戻ってきた。」










陽輔は私の震える頬にもう片方の手を添えた。















「俺は、お前に〝ありがとう〟って言われたくて、必死だった。」













陽輔の顔が大人になった25歳の顔に戻った。














「俺は、お前の隣で、お前を支えられる男にもう一度なりたくて、戻ってきた。」




















そう言うと陽輔はゆっくりと私の唇に自分の唇を落とした。

















































「凛子さん‥‥」














振り返るとそこには、











裏切ってはいけないもう1人の男の人が立っていた。










前髪が風でなびき、左眉の上にある大きな傷が、









彼の心の傷にも見えた。