王子のことは入学した時から知っていた。

そりゃそーだ。

同級生の女の子はもちろん。上級生の女の子までキャーキャー言っていた。

入学初日から何人に告られているのか気になるほどだ。


‥‥まぁ、確かにかっこいい。


顔はほんとに度ストライクだ。


でも姉と2人暮しだったせいか、男の子に免疫がなく、かっこいいとは思ったが、好きなの?と聞かれるとそうではなかった。


ある日、放課後、人通りの少ない中庭の花壇を見ながら委員会に行っている友達を待っていた。


すると、



「お前さぁー、なーんで彼女つくんねーの?」


男の子の声がした、あ、この声、隣のクラスの渡辺だ。

あと1人は‥‥?

植木を挟んだもう一つの中庭を覗いてみると、


「‥‥あ!」


「‥‥ん?」


「おーい!どーした?松井ー!」


「いや、声がした気が‥‥」


お‥‥王子だ!振り向かれるととっさに隠れてしまった。


わたしは植木に隠れて盗み聞きのような形で身を潜めていた。


「で?なんだっけー?」

王子と渡辺はキャッチボールをしながら話していた。


「だーかーらー!なんでそんなモテるのに彼女つくんねーーのっ?」


パンッ!

渡辺は少し強めに投げた。


「‥‥んー、俺、好きな人いるし」


パンッ!


王子も強めに投げた。


「まじか!俺聞いてねーぞ!!」


へー、王子好きな人いるんだ。


「だって、言ってねーし!」


「なんだよ!それ!俺の知ってる人かよー?」


パンッ


「知らないよ。誰も。」


「どんな人?」


「年上、でも今何してるかもわからないし、どこにいるかもわからない。」


「は?それじゃあ、ほとんど会ってねえの?」


「うん。もう5年くらい」


「5年!?‥‥そんなに綺麗な人かよ?」


「綺麗だよ。なにもかも。俺が惚れるんだぞ??」


「なんだそれ、お前の基準がわかんねーーよっ!」


パンッ!


「はは!‥‥‥‥約束したんだ。」


「‥‥なにを?」


「5年前、あなたと同じ歳になったら迎えに行く。って」



「‥‥あと何年だよ?」


「あと2年だよ。」


「え!てことは‥‥7個上!?まじか!」


えぇー!7個上!?王子意外と熟女好き?


「お前意外と熟女好き?」


おお、渡辺とシンクロした。


「ばか!熟女じゃねーよ!‥‥ほんとに綺麗な人。」


「ふーん。」


「‥‥絶対‥‥迎えに行く‥‥」


王子‥‥ほんとに一途だな‥‥




‥‥トクン‥‥





あれ‥‥?なに。なんだろう。



王子の話を聞いてから心臓が早くなる。



いや、王子の真っ直ぐな想いに感動しただけだよ!!
うん!きっとそう!!


「お前にそんな想われて幸せだな、その人」


「はは!幸せなのは俺の方だよ‥‥」





王子‥‥あなたの想う人はだれなんだろう。



‥‥わ




‥‥‥‥わ