そしたら、お医者さんになんて言われたと思う?


『非常に残念なお知らせですが。脳に腫瘍が見られました。調べたところ、悪性で進行もはやいため、今からでも、すぐに治療することをおすすめします。』


 そう、言われちゃった…。

 初めは自分が癌なんて信じられなくて。
   
 
 でも、あの人に暴力振るわれてたし、もう別にいいかなっておもってさ。

  お医者さんに抗がん剤治療をすすめられたけど。

 治療しないっていったの。

 それからどんどん癌が進行してって、そのための痛み止とか飲んで、何とか過ごしてたんだけど。
  

 ジンと出会って、痛みをしって、一人じゃない安心感をしって、人を好きになる気持ちをしって。

 初めはこんなに皆と仲良くなるなんて思いもしなかったし、ジンから離れられなくなるほど好きになるなんて思いもしなかった。
 
  ジンと一緒にいるうちに病気のことなんか忘れてて。
 自分がいなくなることも忘れてて、ジンを愛してた。

  ジンと幸せな家庭を作ることを夢みてて。
  ジンと一緒に年をとることを夢みてた

 
  だけど、無理だってわかっててもやっぱり諦めきれなくて。もう一度病院にいった。

 

 そしたら、もう手術は困難だって言われて。

 進められたのがアメリカの病院だったの。

 機械もそろってて、技術が高いからって、先生が進めてくれてね。
 
  それで、倉庫をでてったあと。何とかお金を用意してアメリカの病院にいったの。

 そしたら。

 あまりにも癌の進行がはやすぎてもうできることはないって断られちゃった。


  ほんとはね、わかってた。

 自分の身体が、いまどんな状態か

 あの人に殴られてた時は痛みなんて感じなかったのに、日がたつにつれてものすごい痛くて。

  もう、死ぬんだなぁって。


 だから、最後に。最後に一目見ようと、ここにかえってきたの。

 ジンとあったら、離れられなくなっちゃって。
   
  死んでも別にかまわないって思ってたのに、ジンとあって死にたくない。
  死にたくない。って、おもっちゃって。
 

 だけど、最後にジンとひとつになれてよかった。


 きっとジンは、私の事が凄く好きだから。

 私が癌だってわかったら、黙ってないでしょ…?

 きっとジンなら、私のために一生懸命になってくれるはず。

  そんな姿をみたら、私も離れられそうにないから。


 でも、私はこれ以上ジンに迷惑かけたくないの…。


  これ以上、私のせいで苦しむジンをみたくないから…。